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2008年11月20日 (木)

『東京少年』     小林信彦

新潮文庫

よい

東京都日本橋区にある老舗の跡取り息子。昭和十九年八月、中学進学を控えた国民学校六年生の彼は、級友たちとともに山奥の寒村の寺に学童疎開することになった。閉鎖生活での級友との軋轢、横暴な教師、飢え、東京への望郷の念、友人の死、そして昭和二十年三月十日の大空襲による実家の消失、雪国への再疎開……。多感な少年期を、戦中・戦後に過ごした小林信彦が描く、自伝的作品。



オヨヨシリーズで小林信彦のファンになったわたしがシリーズを読み終えたあとでしたことは、それ以外の作品を読むことであった。ファンとして極めてまっとうなこの態度によって、当時は入手可能であった角川文庫版の『虚栄の市』、『監禁』、『パパは神様じゃない』、『つむじ曲がりの世界地図』なども読むことができた。

読んだのが小学5年か6年生くらいだったので、『虚栄の市』だけはうまく理解できなかったが、小林信彦を本格的にすきになったきっかけの作品が『冬の神話』であった。この作品は、集団疎開の小説である。

うらみは忘れませんよ大声の発表は信用しませんよ、という読み取り方もアリだが、わたしはシビアな学級小説・群像小説として読んだ。
子どもだからといって、みんな仲良く朗らかにというのは大嘘なのだ。

そのような小説の小説的なツクリゴトを排除し、モチーフとなる作者が経験したことを周囲の人間に迷惑がかからない程度にわかりやすく改変したのが本作『東京少年』ではないか。

だから、『冬の神話』では標語が入選したことを主人公に伝えた翌日に陰湿ないじめのシーンがあったのだが、それがカットされていたし、和菓子屋の商品の半分は食べたのではないかと小林の作品で書かれていた祖母の存在がカットされている。東京大空襲で残った地下室で、使用人が金魚を養殖していたシーンもない。

第Ⅰ部では『冬の神話』と重なる集団疎開のときを、第Ⅱ部では縁故疎開のときの話をしている(おそらくこちらは小説化はされていない)。小林信彦ファンとしては、この第Ⅱ部がありがたい。

解説の坪内祐三はこの作品をノンフィクション小説と評しているが、ノンフィクションと小説のはざま、どちらかというとノンフィクションより、ではないだろうか。それはこの作品全体から感じられる知っているものから知らないものへの残さなければならない記録のひとつという印象が強いからである。軍需産業に対して平和産業ということばがあることを初めて知った。

2008年8月11日 (月)

『海辺のカフカ』   村上 春樹

新潮文庫  上下巻

ふつう

読み終わってかなりがっかりした。もちろん、よかったところもあるので「ふつう」の評価にしたが……。

まず上巻で、「世界でいちばんタフな15歳の少年」の物語だと読者に期待させているのだが、ちっとも「世界でいちばんタフな15歳の少年」の物語だとは思えなかった。それとも作者はあれくらいで、世界でいちばんタフな15歳の少年を描いたつもりなのだろうか?

もちろんタフな場面もあるのだが、それは下巻になってからの一部であって、上巻ではほとんどタフな場面などない。まさか、家出くらいでタフだと作者やほかの読者は思っているのか。

上巻に関しての欠点はもうひとつ。「猫殺し」のシーンである。あれがこの小説にとってどれだけ必要なシーンなのか、読み終えたあとでもわからなかった。

下巻に関してはそれほどの欠点はないが、第42章355ページ以降(「入り口の石」以降)の小説としての説得力が弱い。もっと短編であれば読者を眩惑させることもできたのかもしれないが、わたしにはそれ以降は下手なつじつまあわせにしか見えなかった。

それと、魅力的なキャラクターであるナカタさんがどうしてナカタさん状態になったのかが、上巻で必要以上に長く説明らしき文章があって、それも下巻でカタがつくのかと思いきや、そちらのほうはほとんど展開がなかった。あれだと説明にはなっていない。虚飾・粉飾である。

セリーヌの『なしくずしの死』か『世の果ての旅』のどちらか、もしくはその両方と印象が似ていると思うが、セリーヌの作品よりはずっと下である。

2007年12月16日 (日)

東京奇譚集    村上春樹

よい

新潮文庫


村上春樹は偉大な小説家=偉大なホラ吹きというイメージがあってそれは今でも変わりないのだが、冒頭にそれを否定するような文章がある。

そこで語られる「不思議な出来事」が実際に起きたのかそれも含めて村上春樹のうそなのかには興味がない。そんなことを考えても答えは出ないし、それくらいのことは誰にでも起こることだし。

しかし、この短編集の最後に収められている『品川猿』だけは、その前までの四つの作品とは毛色がちがって明らかにウソ度が上がっている

元々うそつき人間の作品のウソ度が上がろうが下がろうが、それはどうでもいいことなのかもしれないが、この作品内容は冒頭のことばと食い違い、読者に混乱を与えるかもしれない。

混乱を与えるのも小説家の仕事かもしれないが。

細部はおもしろいが本筋がない『どこであれそれが見つかりそうな場所で』はわたしの好みではないが、どの作品も一定の基準(買って読んでよかったと思える基準)を超えていると思う。

2007年10月 3日 (水)

『ねじまき鳥クロニクル』  村上春樹

『ねじまき鳥クロニクル』  村上春樹 新潮文庫
      第1部泥棒かささぎ編
      第2部予言する鳥編
      第3部鳥刺し男編


ふつう

村上春樹はパラレルワールドを描くのが好きな作家である。
これまでにも『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』や『中国行きのスロウ・ボート』などを書いている。後者は短編集で厳密にはパラレルワールドではないが、別のところでこの場合の「中国」というのが、地理的な中国ではなくて、「あの世」とか「別世界」を指すのだと書いている。

本作では井戸の底でつながるどこかのホテルの208号室、1945年前後の満州・モンゴル・ロシア、そして現代(もちろんフィクション上のオカダ・トオルを中心とした現代なのだが)を大きな舞台にしている。

この主人公と対照的な存在として綿谷ノボルという、主人公の義兄であり、飼っている猫と途中まで同名であり、不気味な存在として描かれている登場人物があるのだが、彼のことを主人公は各論賛成総論反対的に見ているという表現が何回かある。

そして、この小説も綿谷ノボルのように、各章はそれぞれおもしろいのだが、ひとつの大きな小説としてみたときに、完成度はかなり低く、納得のいく筋書きというものがほとんどない。

第1部が壮大な前フリ、伏線の宝庫といえるのだが、それに対するオチ、答えが第3部までいってもないのだ。

村上春樹ファンならば、しっぽ振ってこんなものでも喜ぶのだろうが、小説初心者や村上春樹の初心者がこの作品からとっかかるのは不幸である。

参考 ウィキペディア『ねじまき鳥クロニクル』

2007年5月 9日 (水)

名人   志ん生、そして志ん朝     小林信彦

よい。

文春文庫

わたしが雑誌『ブルータス』を読むようになったのは、通産11号の対談特集からだった。その号に載っている小林信彦と古今亭志ん朝の対談が目当てだった。当時から小林信彦のファンだったわたしは、彼の名前が出ているものはできるだけ買うようにしていた。

掲載されていた内容は忘れてしまったし、掲載された雑誌もわたしが実家を離れている間に処分されていた(ついでにいえば、本の雑誌の11号以降や、ビックリハウスも)が、これによって古今亭志ん朝の名前も覚えるようになった。

名前を覚えても生で志ん朝の落語を聞ける機会はなかったが、テレビやラジオでかん高い声でせっぱつまった人間を演ずる姿が好きになった。

後日、東京某所でエレベーターに乗り込もうとしたわたしは、正面に志ん朝さんがいるのを見て目が点になり足がとまったが、その隙にドアを(おそらく)お付きの人に閉められてしまい、ペコリと頭を下げられたという貴重な経験がある。

本に関して言えば、落語に興味がない人にはおすすめできないが、夏目漱石に興味がある人は第四章だけでも読む価値はある。

第二章と第三章以外は、読むのはおそらく二度目だが、こういうふうにまとめられたものを読めるのもありがたい。

東京人の極端な照れというものを学んだのも小林信彦からだったということが確認できた。

2007年1月25日 (木)

『うらなり』 小林信彦

よい

文藝春秋刊 1143円

夏目漱石の『坊っちゃん』を覚えているだろうか?

その中の登場人物に、うらなりというのがいたのは覚えているだろうか?

この小説は大きく分けて、『坊っちゃん』の物語をうらなりの視点から見た前半と、作者小林信彦が創作した後日譚とから成っている。

もちろん後半も大きく既成事実(『坊っちゃん』の内容)を壊すことはないので、スムーズに読むことができる。難しい内容ではないので、ゆっくり読んでも一日で読めるボリュームだ(わたしは風邪をひいて体調が良くなかったので、二日かけたが)。

『坊っちゃん』がわかりやすいキャラクターと、B型人間(小林信彦の指摘、血液型のこと)の直情型の行動でひきつける小説だったが、この作品ではわかりやすいキャラクターは同じだが、非B型人間が主人公になるために、同じ物語の印象がまったくちがってくるという魅力が味わえる(前半)。

そして後半では、見事に小林信彦の術中にはめられた読者は、彼の語る物語にのせられてしまうのだ。

そこでは、時代、東京、人間観察の達人である小林信彦のテクニックが存分に活かされている。

この小説をおもしろいと思った人は、同じ作者の『夢の砦』をお薦めする。B型人間を主人公にした60年代を舞台にした物語だ。入手が難しいかもしれないが。

参考  『坊っちゃん』 ウィキペディア

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%8A%E3%81%A3%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93